これは24歳銀行員が、地方銀行を辞めるまでの物語【part5:地獄の融資②】

 

前回に引き続き、僕が融資になってからのことを語っていこうと思います。

今回は僕が初めて企業にお金を貸した話

をさせてもらおうと思います。

僕が最初に担当したのは個人の居酒屋だった

僕が最初に担当した案件は、店の近くにある一軒の居酒屋でした。

うちのお得意様の息子さんが始めた店で、「300万円を貸して欲しい」というご相談を受けたのが始まりだったそうです。

融資の流れ

簡単に融資の流れを説明しておきましょう。

融資は、

  1. 相談を受ける
  2. それを銀行のシステムに登録する
  3. 稟議書を作成する
  4. お客から契約書を貰う
  5. 融資する

という流れで動きます。

基本的に融資担当者と呼ばれる存在は1~5までの全てを一人で受け持ちます。

諸説ありますが、この中でも特に難しいと言われるのが③の稟議書の作成です。

稟議書っていうのは「お金をここに貸したいんです!」ということを書いた提案書で、これが”承認”されて初めて融資を行えます。

承認なしに融資をしたら普通にクビです。てか普通に警察に捕まる可能性があります。

そして今回僕が先輩から任せて貰ったのが③の稟議書の作成になります。

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貸し出すために必要な書類がどれかすらわからない問題

融資って、本当にやることが多いです。

「稟議書を作れ!」

って任されたのは任されましたが、何を作っていいか分からないんですよ。

例えば、

「運転資金を長期で貸すか短期で貸すかで作る書類・お客さんからもらう書類が変わる」

なんて言葉を聞いても皆さん「???」ってなりませんか?

僕が融資に放り込まれたのって、まさにそのぐらいの理解の時なんですよ。

わかる訳ないっすよね。

稟議書の中には

  • 稟議書が何で出来ているかの目録
  • 現在の貸出残高、預金残高等の証明書類
  • その会社に関連する会社・個人を記載した書類
  • 融資を実行してお金が返ってくるかを検討する書類

等々を入れる必要があるんですが、正直それはケースバイケース。

企業毎に必要な書類は変わってくるので、新人にそれがわかる訳が無いんですね。

そして偶然にも入れるべき書類が分かったところで

  • その書類が何を意味しているのか
  • その書類の書き方のお作法

がマニュアルにきちんと落とし込まれている訳ではないので、

ぶっちゃけ何をやっていいのか本当にわかりませんでした。

一応”事務手続”なるマニュアルはあるんですが、

”一枚の書類を作るために数時間それを読み込まなければならないなんてざら”

だったので、正直本当に苦労しました。

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他の仕事も山ほど降ってきて、正直パンク寸前

そして融資の担当者って言うのはその案件にかかりっきりになれるかというと、そんなことは一切ありません。

僕なんかは融資の中でも下っ端も下っ端でしたので、些末な業務がガンガン降ってきます。

例えば外国為替業務という、外貨両替をしたり外国にお金を送ったりしたりの業務も僕の仕事です。

そしてうちの支店には「個人ローン担当」が居ないので、各種ローンも僕の担当業務の一つです。

普通の支店だと個人ローン担当が居て、そいつが「個人ローン、外国為替」を担当し、

法人融資担当は法人融資のみしか担当しないという割り振りなんですが、

うちの支店は僕が全部担当しているという結構異常な状況でした。

勉強のため2時就寝5時起きの生活が続いた

住宅ローンって抵当権とかの話も絡んでくるし、正直凄いむずいんですよ。

僕はローンにも触れたことが無かったので、必至こいて勉強しましたが、

「法人融資がマジでわけわかんねぇ……」

ってなって勉強しているその最中に知らないローンの相談が来るので、もうてんやわんや。

毎日夜遅くまで勉強して、朝は早起きして仕事の準備をするという毎日が続いてました。

元々の能力に加えて寝不足が祟り、ミス連発。進まぬ仕事

自分ADHDなんじゃね?と思うぐらいに僕はミスが多い人間です。

なので元々仕事のミスって結構多いんですが、それに加えて僕の上司は例の副長。

ミスると死ぬほど怒られ、それにイライラしてると更にミスを重ねるというクソスパイラルが常に起こってました。

そしてそこに重なる寝不足と単純な知識不足。

もうそれは山のようにミスをしました。

そしてそのリカバリーのために時間を費やし、本来自分がやる仕事が進まない……。

そんな状態に陥ってしまい、とうとう任された融資の期限がリミットに近づいてきました。

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近づくリミット。先輩に泣きつく僕

今でも覚えてるんですが、

融資をしなきゃいけない日は3/30だというのに、稟議書が3/27時点でほぼまっさらでした。

この案件を任されたのが3月の半ばなので、二週間ぐらいあって何も進まなかったという訳です。

さっきも言った通り、稟議書が承認されて初めて融資というのはすることができます。

なので稟議書がこの段階でまっさらというのは、ベテラン銀行員でもなければ相当に危ないレベルなんですね。

流石にこれはまずいと思い、「仕事を教えてください」と僕は先輩に頭を下げました。

出来れば一人でやってみたかったんですが、時間的な制約を考えると現実的に無理です。

仕事終わった後に時間を取ってもらって、H先輩に融資を教えて貰うことになりました。

22時くらいから居酒屋でH先輩と勉強会

3月の融資グループは忙しいので、基本支店を出るのは21時を回ってからでした。

なので教えてもらえるのはその後の時間帯。

しかもカフェなんかは空いてないので、個室の居酒屋を探してそこで仕事を教えてもらってました

先輩も疲れているだろうに、わざわざ時間を割いて教えてくれたことには今も本当に感謝しかありません。

「知ってた」

その席で、僕は正直に先輩に現在の進捗を打ち明けました。

  • もう期日が近いこと。
  • 書類は作成しているが合っているのかわからないこと。
  • 正直期日に終わらせる自信がないこと。

全部ぶちまけました。

進んでないことを隠してましたと、自分の進捗を告白したわけです。

正直怒られるなと思って覚悟していると、先輩は笑いながらこう言ったんですよね。

「知ってた」

と。

「本当にやばくなったら、俺が取り上げてやるから」

今考えれば当然なんですが、

H先輩程優秀な人が、僕の仕事が進んでいないこと程度見抜けないわけないんですよね。

進んでいない所も大体具体的に把握してくれていて、その時は非常に驚いたものです。

僕的にはもう

「融資をしてあげられないぐらいヤバいんじゃ……?」

と思って懺悔したに近しい勢いだったんですが、先輩の肌感覚ではまだまだリミットでは無かったそう。

「俺がその案件を○○から取り上げてないんだから、まだまだ大丈夫ってこと。やばかったら取り上げてるから」

と笑いかけてくれて、

「本当にやばくなったら俺が取り上げてやるから、出来る所までやってみな」

と言って仕事を丁寧に教えてくれました。

繋がる点と点。完成が見える稟議書

点と点が繋がるとはこのことを指すのでしょう。

H先輩がめちゃくちゃ仕事が出来るのに加えて、説明すら上手でした。

話を聞いていくうちに、今までに見えなかった完成形が一気に眼前に広がったんですよね。

まるで僕の質問に分かりやすい回答を用意して他の如くスラスラと答えてくれる先輩。

今までに悩んでいた所が次第に繋がり、一本のゴールが見えてきたのです。

「融資はストーリーを描くことが大事だ」とよく言われますが、

まさにこの時は描いていた絵が動き出して一つのストーリーになっていくような、そんな感覚を味わいました。

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完成する稟議書。そして融資実行

そして来たる3月30日。

ようやく稟議書が完成しました。

本来なら融資を実行する当日に稟議書が完成するなんてあってはならないんですが、最初の融資ということで皆大目に見てくれたようです。

ちなみにこの時ばかりは融資の副長にも殆ど怒られませんでした。

あの人に気に入られる努力をすれば認めてくれる人ではあったので、この努力はあの人の琴線に触れてくれたのでしょう。

ハンコを押してもらいにくいあの副長のハンコがあっさり押され、そのまま支店長の承認までとんとん拍子で得ることが出来ました。

稟議書に承認が下りるということは、つまりはお金を貸すことが出来るという事です。

僕はこの日、初めて銀行員としてお金を貸しました。

ただ、正直実感はあまりなかった

銀行が実際にお金を貸す時って、銀行にあるパソコンみたいなので数字を打ち込んでエンターを推すだけなんですよ。

その後検印を貰ったりとかの手続きはあるんですが、全部電子上で作業が完結します。

お金の束を直接お客さんに渡すわけではないので、ぶっちゃけ実感って生まれにくいんですよね。

300万円の融資をしてそんな褒められたわけではないですし、貸した後も雑務に追われてて必死だったので、実感は全然ありませんでした。

そんな時、僕が融資した居酒屋で新入行員の歓迎会が行われた

ようやくお金を貸したという実感が湧いたのは、新入行員の歓迎会をした時でした。

新入行員の歓迎会は、僕が融資したその居酒屋で行われました。

お金を貸したばかりですし、支店から近かったので丁度良かったのです。

正直そこで飲みをすると聞いても特になんの感慨もなく、しかも僕は残業でその歓迎会に遅れていたので、感じ入るものは特になかったわけです。

でも実際にそのお店に入ってみて、そこで飲んでいる人たちを見た時、その考えはぶっ飛びました。

「ああ、この空間を僕は作ることが出来たんだなぁ」

と、不覚にもジンと来てしまったのです。

あの時は正直震えました。

銀行員のやりがいとは、多分これなんだと、そう実感した瞬間でした。

僭越ながら、僕が出した金のおかげでその空間は作られた訳です。

僕の金がなければその空間はできなかった訳で、僕がその空間を作ったと言っても過言では無い訳です。

その事実に心の底から感動したのを覚えています。

多分、あの時あの店で飲んだビールの味を僕は一生忘れないでしょう。

ちなみに

その居酒屋は非常に繁盛しているそうです。

預金を見てチェックとかしてるんですが、右肩上がりで増えてますし、いつも人で賑わっているのが見えます。

もしあの土地にもう一度行くことがあれば、またあの場所で飲みたいものです。

まとめ

以上、僕の初めての融資の体験談でした。

次回はいよいよ銀行を辞める切っ掛け等の話に入っていきます。

前回

これは24歳銀行員が、地方銀行を辞めるまでの物語【part4:地獄の融資①】

2019年1月22日

次回

これは24歳銀行員が、地方銀行を辞めるまでの物語【part6:地獄の融資③】

2019年1月25日

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