ホントについ最近ですが、ネット上を賑わせた問題があります。
それが、「イケハヤ、地銀に融資を断られる(※)」という中々衝撃的なもの。
イケハヤ氏と言えばブログ界で最も有名と言って過言じゃない存在で、中々極端な物言いをすることで有名なブロガーです。
さんざん地銀をdisっていた御尊師ですので、ネット民、特にアンチイケハヤ派は大歓喜も大歓喜。
僕はアンチじゃないので別に歓喜も糞もないですが、地銀マンとして非常に面白くこの騒動を拝見しておりました。
地銀、融資、ブロガー……とくれば僕の出番だろう、ということで、
今回は現役地銀マン、しかも現場で融資をしている立場である私が、この騒動についてコメントしてみたいと思います。
ちなみに予め言っておきますが、
僕は地銀マンですが、地銀を擁護するような内容にはあんまならないので、アンチイケハヤ側の人はあまり期待せずお読みください。
※ちなみに僕の地銀に対するスタンスはこちらを読んでいただければ幸いです。
※正確には断られたわけじゃなく、審査待ちという話みたいです。
目次
事件のあらまし
どうやらイケハヤ氏、「事務所の改築」でお金が必要になったそう。
それで融資の相談のために地銀に赴いたところ、色々思うところがあったそうです。
それがこちら。
とある地銀に融資の相談にいったのですが……うん……という感じ。
ほんと、全部ネットで完結すりゃいいのにねぇ……。
この金利じゃ融資しても大して儲からないからやる気ないのかな?
そりゃ地銀は淘汰されていくよね……。— イケハヤ@ブログ年商1.5億円 (@IHayato) 2018年9月14日
当氏のブログにも記載されていますが、簡単に纏めると、
- メールとかで融資の相談出来ないのは流石に前時代的過ぎる
- 地方銀行なのに地方の中小企業への融資が及び腰なのは意味不明
といった点に不満を感じたそう。
まぁ分からなくはないですね。これは働いていても思うことだったりするので。
そしてこのツイートをした後、当氏のお家芸、炎上が(図らずも)発動します。



来るわ来るわリプの数々。
当氏は元々盛大に銀行をdisっていた方なので、まぁ当然と言えば当然ですが。
「散々銀行をオワコンとdisっていたくせに、銀行に融資を申し込みに行って断られたってよwwwざまぁwww」
となって今回は軽く炎上したわけです。
ちなみに当氏曰く、
「イケハヤが融資断られた」とか勘違いしているアホが湧いてるけど、断られてないですよw
決算書渡したら「協議した上で、また折返し電話で連絡します。2週間以上かかります(メールは非対応)」と言われて驚いたんですよね。
対応的自体も「1,000万程度の融資はやる気ないっす」という感じ……。 https://t.co/8kO36jg00W— イケハヤ@ブログ年商1.5億円 (@IHayato) 2018年9月14日
「まだ審査の段階であって、断られてはいない 」
とのことなので、
「イケハヤが融資審査に落ちたwww」
「融資断られたってよwww」
というのは少々早計かもしれないので、気を付けましょう。
今回の論点(炎上ポイント)は主に二つ
①銀行disってたくせに、何故銀行から借りるわけ?
まずはこれでしょう。
正直、僕としてもここは不可思議でした。
一応当氏はこのように述べております。
地域経済のためにも、地域社会を作る仲間である(と思っていた)地元地銀でお金を借りようと思ったのですが……。
まぁ大義名分としては成り立ちますね。
仮にも地銀は「地方に根差し地方を創生する」役割を持った機関ですから、地方のためを思うならそこから借りるというのは正しい選択のように思えます。
ただ、元々の銀行disが見る人から見れば恐らくはイラっと来るものだったので、
正直、今回この部分について叩かれても当氏に反論する余地は一切ないと僕は思います(クソリプ除く)。
まぁ地銀がクソなのは圧倒的に同意だけどね。オワコンなのは事実だし。
でも、今回荒れてるもっと大きな理由がこの次のものです。
②金あるのに何でお金借りる必要あるの?要らないじゃん
今回の炎上の大きな理由はこれです。
金があるのに何故借りる?という話。
それに関してむしろ本人のツイートより遥かに伸びてんじゃん……というツイートがあるので、紹介させてもらいます。
藤田華鳳さん(@Kaho_yurucareer)という方のツイートです。炎上の一因ですね。
今をときめくブロガー界のアイドル、イケハヤ氏が散々ディスっていた地銀に融資を申し込んだそうですね。
金融機関で支店融資と本店審査の両方をかじったことがある自分が考えたことを、そこはかとなくかきつくっていきます。
酔ってるし書き溜めしてないのでのんびりやります。
じゃあいくよ!
— 藤田華鳳 (Kaho Fujita) (@Kaho_yurucareer) 2018年9月15日
ちょっと長くなるので全部は引用しないんですが、簡単にまとめるとこんな内容です。
- 多分融資の内容は建物とか建てるお金だよね
- でも儲かってるって散々言ってるのに、ほんとに融資必要なの?
- 本当は儲かってなくて、決算書も誤魔化してるんじゃない?赤字だからお金欲しいのかな?
- そもそも銀行の融資には厳正を期すためにに時間がかかるのを分かっていないよね
- 彼はONEの件とかで信用問題もあるし、そこでも引っかかってるのでは?
実際はもっと長いですが、エキスを抽出するならこんな感じでしょう。
的を射ているところはありますね。
この方、私と同じく現役銀行員らしく、恐らくは私より経験もされていらっしゃる方なのでしょう。
一般の方にもわかりやすい。
ですが、
ってなる所があります。
詳しく見ていきましょう。
地銀マンが双方の意見等への補足と反論、解説をしてみる
儲かっているなら金借りなくてよくね?という意見は少し間違ってる
上で紹介した藤田華鳳さん(@Kaho_yurucareer)も、「儲かっているのに何故借りるのか」
という疑問を呈しておりまして、その推論として「実はお金がないのでは?」というものを暗示されてます。
ですが正直これに関しては「この人銀行員なんだよね……?」と思ってしまうところがあります。
何故かというと、儲かっている会社でも全然普通にお金の借入はするから、です。
金を借りる=金がない
という考えは間違ってなくて、事実そういう企業の方が多いのも現実ですが、
事業を更に拡大するために借入をする
ということは企業には往々にしてあるのです。
例えばトヨタを皆さんご存知でしょう。
年に2兆円の純利益を出す、純利益日本一の化物企業であるトヨタですが、
負債額でも日本企業の中でトップクラスに位置しているのをご存知でしょうか?
長くなるので割愛しますが、トヨタのような利益馬鹿高の現金ジャブジャブの大企業ですら借金するわけです。
なのでイケハヤ氏が儲けを出していて金はあるけど、事業拡大のために仮入れをするというのはそんなにおかしい選択ではないわけです。
ただ、
「当氏が粉飾決算(決算書を金があるように誤魔化すこと)をしていて、本当にお金に困っていて相談に行った」
……という可能性も0ではないので、藤田華鳳さん(@Kaho_yurucareer)の意見が100%間違っているわけではないので悪しからず。
銀行員は「お金があるのに何故借りるの?」とは中々聞かない
実は銀行員、こういった聞き方はあまりしません。
どういった聞き方をするかというと、
という聞き方をします。
銀行用語で「資金使途」といいますが、資金使途を詳しく聞くことはあっても
と安易にはなりません。これがさっき僕が
と思ってしまった理由の一つです。
まぁ絶対に聞かないか?と言われれば正直そうでもないです。怪しい先にはそういう聞き方もしますし。
ただ、機会としては多くありません。
多分この人はイケハヤ氏の日頃の銀行、会社員disにイラついて、「イケハヤは粉飾しているのでは?」という仮説の元でスタートしたからこうなっているのでしょうね。恐らく。
※2018/9/18追記
ただ書き殴ってただけなのに本人に言及してもらえた件(笑)
ちなみにですが、うちの銀行だと金が余っている所ほど厳密に確認しない傾向にあります。
ぶっちゃけ甘いっす。何故って?審査部があまり厳密にチェックしろという指示を出さないからですね。
そして金があるからいざとなったら返して貰える確率が高いからですね、そういった企業は。
むしろ資金使途のチェックが厳しくなるのはちょっと財政面が厳しい先です。毎日毎日帳票を出してチェックします。
銀行の融資って「借りたら終わり!」じゃなくて、
何処にどういくら振り込んだか?みたいなことまでマジで厳密にチェックします。
当然現金あまりの先もやりますけど、要注意な先はより厳密にやります。
……まぁただ、イケハヤ氏みたいな方が「金あるけど貸して!」と言ってきたら疑う気持ちはわかります。
ただ、財務面とか分析をしっかりしたならあんまそういう聞き方はしないかなぁ?といった印象。あくまでうちはだけど。
誤解なきよう強く行っておくと、金余ってる咲でも資金使途の確認は本当にガッツリしますからね。
「なんで金余ってるのにニョロニョロ」という聞き方をしないだけで。
銀行の融資は実際かなり時間がかかる
銀行融資は驚くほどにやることがあります。
「こいつ反社会的勢力じゃねぇよね?」
って警察に問い合わせたり、
「決算書粉飾してないだろうな?」
って決算書を隅々まで見たり、
「本当にお金出しても返って来るのか?」
っていうのを検証するために資料を作りまくったりなど、本当に色々やることがあります。
なので正直、
「2週間待たされる」というのはそんなに不思議なことじゃありません。
なお、審査には時間がかかりますが、審査前の検討にもそれなりに時間がかかります。
銀行はいきなり審査なんてしません。
なぜか?それは、銀行のリソースは有限なので、わざわざ時間とお金をかけて融資審査をしてもいい相手かどうかを見極める必要があるから。
— 藤田華鳳 (Kaho Fujita) (@Kaho_yurucareer) 2018年9月15日
今週と来週は祝日があり営業日数が少ないので、銀行に言われた2週間はその検討のための期間だと思われます。
恐らく、否決の場合はもう少し早く回答があるかと。
自分に借りれる信用力がないのを棚に上げて、まだかまだかと煩いクレーマーが多いので、長めに期間を伝えるのは私もよくやります。
— 藤田華鳳 (Kaho Fujita) (@Kaho_yurucareer) 2018年9月15日
この方もこうおっしゃってますが、この意見には正直全面的に賛成。
もし審査がノータイムで通るとか、メールとかの非対面で色々出来て超利便性が良い!なんて銀行があったとしたらそれは、
担当者とか経営陣が死ぬほど優秀か、もしくはこの先スルガ銀行みたいな結末を迎えていく審査体制の甘い銀行だろうと個人的には考えています。
なのでレスポンスのクソ早い銀行を探すのも良いですが、もしかすると諸刃の剣かもしれないことをイケハヤ氏は認識すべきかもしれません。
……まぁそれにしても硬すぎるんだけどね、銀行は。
ぶっちゃけ新規でやってくる融資客はかーなーりー身構える
一応新規で顧客は欲しいので、色々我々も新しく貸す先を探してはいますが、
窓口にいきなりやってきた一見の法人に融資をするかと言われたら、正直身構えます。
こう言うと、
って思われる方がいるみたいなんですが、ぶっちゃけ銀行と預金取引をしている事は貸出の決定的理由になり得ません。
当然預金取引のデータを元に営業をかけることはありますが、基本的に銀行が金を貸したい!と思うのは、
- データとかを元に銀行側から営業をかけに行った法人
- 有名な会社
- 大手取引先からの紹介客
- 医者、弁護士等の社会的信用抜群の相手
ぐらいなもんです。
インバウンドで来る一見の相手は、正直
ぐらいにしか思ってなかったりします(※個人の意見です)。
当然全部の地銀がこんなであるわけじゃないですけどね(笑)少なくとも僕が担当だったらそう思います。
地銀のノウハウ的に、ブロガーに金を貸すのは多分ムズイ
僕とか、あとITやwebに詳しい奴が担当者だったら、多分色々便宜を図れると思いますが、多分、
上司を納得させるのに物凄い手間がかかる
と思われます。
これに関しては正直僕も良く分かりません!
ただ、ノウハウはぶっちゃけないんじゃないかな……?少なくともうちの銀行は無いと思う。
あとぶっちゃけ銀行からすればイケハヤ氏に社会的信用がないのも事実
遺憾ではありますがこの日本、webで生計を立てているというと怪しまれるのが常識というものです。
これだけITが発達し、技術の進んだこのご時世でも、アフィリエイターとかはいまだに
「情報商材屋」
だの
「詐欺師」
だのと呼ばれてしまうことが多いのは純然たる事実だと思われます。
そして、そういった考え方を持ってる人間が多い会社が銀行であるというのもまた事実。
ONEれいほくの件とかは良く知らないので言及を避けますが、社会的信用に重きを置く企業である銀行とは相性は悪いでしょうね。
まとめ
イケハヤ氏が言う通り、ぶっちゃけITに慣れ切った若者からすれば地銀のユーザビリティは最低だと思います。
ファックス、電話の応酬は当たり前ですし、slackやchatworkなんて99%の人間が知りませんからね(笑)
ただ、その固さがあるが故に銀行は銀行としてやってこれている部分もあるのでしょう。
まぁ大概の銀行が保守的過ぎて新しいものを導入することの検討すらしてないのも確かでしょうけど(笑)
もし今後彼が銀行と付き合うのならば、何処もきっと同じでしょうし、そこは飲み込んでいく必要があるでしょうね。
さて、長くなりましたが今回はこの辺りで失礼をば!
最後に一言言うとすればね。
地銀はね、糞だよ(震え声)
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とても分かりやすい内容でした。ありがとうございました。
業界は全く異なりますが、うちの業界でも上の方々がITを仕事に取り入れることに抵抗があるようです。そのおかげでお客さんの時間を奪ってしまいますし、我々の仕事の効率も落ちてしまいます。
ITという単語が出てからこれだけ時間が経つのにどの業界も現場の人間は同じようなことで悩まされていますね(笑)